歯医者を何度も変えてしまう「ドクターショッピング」とは?後悔しないための相談方法
2026/9/14
「治療の説明に納得できなかった」「痛みが続くのに大丈夫と言われて不安だった」「歯医者を変えたけれど、また別の疑問が出てきた」
このような経験を重ねるうちに、受診先を何度も変えてしまう方はいらっしゃいます。
医療機関を変えること自体が悪いわけではありません。
大切なのは、焦りや不信感のまま治療を中断したり、十分な情報がないまま次の治療へ進んだりしないことです。
今回は、いわゆる「ドクターショッピング」という言葉の意味と、後悔を減らすための相談の準備について、私の考えをお伝えします。
「ドクターショッピング」とは何でしょうか

ドクターショッピングとは、症状や治療への不安から、複数の医療機関を短い期間で次々と受診する状態を指して使われることがある言葉です。
ただし、この言葉だけで患者さんを判断するべきではないと私は考えています。
歯科治療では、痛みの原因がすぐに判別しにくいことがあります。
また、過去の治療への不満、説明不足と感じた経験、治療中の痛みへの恐怖などがあれば、「本当にこのままでよいのだろうか」と迷うのは自然なことです。
一方で、受診先が変わるたびに検査や診断が最初から必要になったり、治療の経過を継続して確認しにくくなったりする場合もあります。
治療途中の歯を放置すると、状態が悪化するおそれもあります。
そのため、転院するかどうかを急いで決めるよりも、まずはご自身の状況を整理し、話を聞いてもらえる場をつくることが重要です。
歯医者を変えたくなる背景には、理由があります

受診先を変えたいと思う理由は、人によって異なります。
たとえば、次のような思いがきっかけになることがあります。
- 治療の目的や選択肢について、十分に理解できないまま進んだと感じる
- 治療した歯に痛みや違和感が残り、不安が消えない
- 予約や通院の負担が大きく、治療を続けにくい
- 以前の受診先で質問しづらかった
- 抜歯や神経の治療を勧められ、ほかの考え方も聞きたい
特に、治療後に痛みが出ると、「治療が失敗だったのでは」と心配になるかもしれません。
実際には、治療による刺激で数日ほど痛みや違和感が出ることもあります。
しかし、痛みが強くなる、腫れがある、噛んだときに強く痛む、症状が続くといった場合には、我慢せず歯科医師へ伝えることが必要です。
神経を取った歯であっても痛みがある場合、歯の根の周囲や歯を支える骨に炎症が及んでいる可能性などを確認する必要があります。
自己判断で受診をやめるのではなく、現在の症状を具体的に相談してください。
転院の前に、まず整理しておきたい3つのこと

相談の時間を有意義にするために、受診前に次の3点をメモしておくことをおすすめします。
スマートフォンのメモ機能でも構いません。
1.過去の治療で不満だった点
「説明が少なかった」と感じた場合も、できるだけ具体的にしてみてください。
- どの歯を、いつ頃治療したのか
- どのような説明が分かりにくかったのか
- 治療中・治療後にどのような痛みや不安があったのか
- 何を質問したかったのか
不満をうまく言葉にできなくても問題ありません。
「怖くて聞けなかった」「納得できないまま治療が始まったように感じた」と率直に伝えてください。
私たち歯科医師にとっても、患者さんがどこに不安を感じているかを知ることが、治療を一緒に考える出発点になります。
2.現在もっとも困っていること
症状は、場所・強さ・きっかけ・経過を分けて伝えると確認しやすくなります。
- どの歯、またはどのあたりが気になるのか
- 冷たいもの、温かいもの、甘いもの、噛むことのどれで痛むのか
- 何もしなくても痛むのか
- いつから続いているのか、良くなっているのか悪化しているのか
- 腫れ、出血、詰め物・被せ物の外れなどがあるか
外れた詰め物や被せ物があれば、捨てずに持参してください。
また、服用中のお薬や持病は、歯科治療の方法に関わることがあるため、お薬手帳などで確認できるようにしておくと安心です。
3.これからの治療に希望すること
「できるだけ歯を残したい」「痛みへの配慮をしてほしい」「選択肢を聞いてから決めたい」「通院回数の見通しを知りたい」など、ご希望を遠慮なく伝えてください。
すべての希望をそのまま実現できるとは限りませんが、治療の優先順位や受け止め方を共有することで、納得できる選択に近づきやすくなります。
相談先を選ぶときは、「話す時間」を大切にしてください

転院するべきかどうかに、すぐ一つの答えを出す必要はありません。
まずは、今の不安や治療経過をきちんと聞き、検査結果をもとに説明してくれる歯科医院へ相談するという選択肢があります。
相談時には、次のような点を確認してみてください。
- 現在の症状について、考えられる原因を分かりやすく説明してもらえるか
- 必要な検査と、その検査を行う理由を聞けるか
- 治療の選択肢、治療しない場合に考えられること、経過観察の考え方を相談できるか
- 質問する時間があり、理解できる言葉で説明してもらえるか
- 治療開始前に、自分が納得できているか
当院でも、まず問診で症状やこれまでの治療歴、不安に感じている点を伺います。
そのうえでお口の中を確認し、必要に応じて検査やレントゲン撮影を行い、状態を把握します。
検査結果をもとに治療方法をご説明し、ご質問にお答えしたうえで、患者さんが内容を理解・納得されてから治療を進めるよう心がけています。
「治療を変える」より、「治療の目的を共有する」こと

虫歯は、単に削って詰めれば終わりとは限りません。
歯みがきの状況、間食の内容やタイミング、よく噛む習慣、歯ぎしり・食いしばり、歯質など、複数の要因が関わるとされています。
たとえば、治療した歯の周囲に歯垢が残り続ければ、詰め物や被せ物の境目から再び虫歯になることがあります。
また、歯ぎしりや食いしばりによる小さな亀裂が、歯のトラブルにつながることもあります。
だからこそ私は、「どこを治すか」だけでなく、「なぜその歯が悪くなったのか」「これから何を一緒に見直すのか」を患者さんと共有することを大切にしています。
初期の虫歯では、状態によっては削る治療ではなく、歯みがきや生活習慣の見直し、定期的な管理を中心に経過をみる考え方もあります。
不信感を抱えたまま、一人で決めなくて大丈夫です

何度も歯医者を変えてしまったことに、後ろめたさを感じる必要はありません。
これまでの経験のなかで、納得できないことや怖かったことがあったのだと思います。
ただし、症状がある歯や治療途中の歯を長く放置することはおすすめできません。
痛み、腫れ、噛みにくさ、被せ物の外れなどがある場合は、できるだけ早めに相談してください。
当院では、過去の治療への不安や、現在の痛み・違和感についても、まずお話を伺うことから始めます。
以前の受診先に対する不満を無理に整理しきれなくても構いません。
今困っていること、これから大切にしたいことを一緒に確認しながら、治療の必要性と進め方を考えていきます。
最終的な診断や治療方針は、実際にお口の中を拝見し、必要な検査を行ったうえで判断します。
転院するか迷っている方も、一人で悩み続けず、まずは十分に話せる歯科医院へ相談してみてください。
この記事は一般的な情報提供です。実際の診断、治療方針、保険適用の可否は、口の状態を確認した歯科医師の判断によります。